2021.11.13 スマッシュ#92 現地生放送 

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現地生放送、深夜にも関わらず

多くの方々に聞いていただきありがとうございます。

多くの人たちの協力により実現し、無事完走できたこと、ありがたく思います。

 

はじめての、ど深夜生放送、移動、ヘディング

まだ体にはその疲労が残っています。

それはつまり、現地生放送が我々に残した

"ギフト" に他なりません。

 

皆さんの前に放送という形で我々が姿を表せるのは放送時間の3時間のみです。

しかし、その3時間に至るまでの軌跡は、なかなか皆さんにお見せする機会がない。

ミッドアウトの2人の、スタッフの、放送時間に至るまでの足跡を皆さんにお伝えし、さらに放送を楽しんでもらえたら。

その一心で書きたいと思います。

 

 

 

ミッドナイトゲットアウト

 

 

1人の男は会社員である。平日、朝出勤し、働き帰れば2人の子どもの面倒を見、家族4人で団欒する、神奈川に住む男だ。

 

1人の男は鹿児島に住むミュージシャンである。誰もが知る有名人ではない。が、全国各地、小さなライブバーやライブハウスが彼が歌いにくるのを待っている。

 

そんな2人が集い、話す場所がある。

 

その場所での2人のおしゃべりは他愛がない。あのさ、と普段あった話をあーだこーだと話している。すごく笑いながら話してる日もあれば、そうでもない時もある。

 

その周りを囲むように、その話に耳を傾ける人たちがいる。

ある人は座りながら頷いて、ある人は寝っ転がりながら頬杖をつきながら、スマホでメールを打ちながら聴いてる者もいる。

 

その2人のおしゃべりを、大きな電波塔から発信している男がいる。大きなタスキには楠元、の文字と興味を持て!と達筆な筆字で書かれている。

 

 

 

2人が話す、その場所の名は

"ミッドナイトゲットアウト"

というらしい。

 

 

ニシゾノマサト

 

 

空港へと向かう電車の中で彼は上機嫌だった。鼻歌を歌っている。いやこれは鼻歌というレベルではない、歌っている、歌っていると言っていい。電車の中でだ。京急本線エアポート急行の車内に彼の歌が響き渡っている。彼がしているイヤホンからは、何やら弾き語りの音楽がかかっている、それと一緒に歌っているのだろうか。ここまで上機嫌なのは珍しい。

目的地は羽田空港第二ターミナル。バッグは控えめな大きさ。旅行、にしてはずいぶん控えめな荷物だ。バッグの中もそんなに入っていなさそうな印象だ。

羽田空港第二ターミナルへと到着した電車を降り、彼は歩き出す。相変わらず歌を口ずさんでいる、さっきと同じ曲を何度も何度も。

改札を越え、空港でのチェックイン作業を終え、搭乗ゲートへと。その足取りはとても軽やかだ。まるで進むべき道が光っていて、それを辿って歩いていくかのような。

そんな彼に聞いてみた。

 

「どこまでいくんですか?」

 

 

すると彼は笑顔とも真顔とも取れる顔で答えた。

「未来まで」

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わかまつごう

 

 

森を風が抜けていった。彼は椎茸をとっていた手を一瞬止め、空を見上げる。

「そろそろ、飛ぶ頃か」

そう呟いたかと思うと彼は収穫した椎茸と大根、小松菜、サニーレタスを袋に詰めて車に乗った。

 

カーステレオからは弾き語りの音楽。

山道を降りていく。道は狭く向こう側から車が来たら離合は難しいだろう、山道を降り、226号線と合流する。そこで彼は右折のウインカーを出した。

「空港は左折ですよ?」

 

思わず私は声をかけた。

 

一瞬私の声に驚いた表情を浮かべた彼だったが、すぐさまニコリと笑い、椎茸を指差してこう答えた。

 

「その前に、会っておかないといけない男がいるんでね」

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楠元貴宏

 

 

たけどんのドンドンサタデーの放送中、彼はミキサールームで普段の精彩を欠いていた。ちょっと、これ曲違いますよ、と注意を受けている。

普段はミスの少ない男だ。どこまでも真面目でまっすぐ。その真面目さ、正確さからミキシング・マシーンと呼ぶ人もいる。そんな男がこんなミスをすること自体が珍しいので、スタジオは柔らかい笑いに包まれた。

 

「あげなミスは珍しかな、西田あいさんの曲がかかる所で、なんな?あの弾き語りの曲は。どげんしもしたか、くすもとどん」

 

CM中、令和のせごどんこと、たけどんが声をかける。

 

「ははは、査定に響いちゃうな」

と彼は頭をかく。

 

薩摩地方の天気は曇り時々雨。

大気の状態は不安定になっています。時折晴れ間も見えますが急な雨にご注意ください。

 

CM後の天気予報を読み上げながら彼は

窓の外の空を見上げる。

「無事に飛んだだろうか」

 

 

 

わかまつことみ

 

オーブンの音が鳴った。

あれ?おかしい、たしかに音は鳴ったのに、オーブンは全く温まっていない。電源コードが入っていなかったのだ。なーんだ。

「ふぇにょ」

抱っこ紐の中で娘のことはちゃんが声を出す。ことはちゃんも母のおっちょこちょいをからかっているのだろうか。

電源コードをしっかりと差し込み、今度こそオーブンが温まりだす。オーブンがしっかりと温まった後、生地を入れ込み、蓋を閉めた。

「美味しくなってね」

お菓子を作るときはいつもおまじないのように、または祈るように声が漏れる。

 

やがてまたオーブンがチンと鳴り

焼き上がったのはアップルパイ。

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部屋中にいい匂いが充満している。

りんごのにこめられた花言葉は「選択」

なるほど、素晴らしい未来へと、今日という日を選択しよう、そういう意味が込められているのだろうか。

 

アップルパイの描く大きな円は大団円を

編み込まれたその交差する線は人々の絆を暗示している。

 

「本当は現地で見届けたい、でも今はことはちゃんも小さいからね。ならば、今の私にできることを、それだけです」

 

彼女は照れ臭そうに言いながらパイを切り分ける。

 

ガラガラ、と音が鳴り旦那が帰ってきた。

 

どうだった?と声をかけると

旦那は彼女の口元に手を当て答える

 

「ラジオでね」

 

 

 

 

わかまつごう

 

 

彼はニシムタで店員さんに声をかける。

 

あの、バスケットボールありますか?

 

店員さんが、こちらですね!と売り場へと案内する。途中、「あっ、でも本格的なのがあったかなぁ」と店員さんは言う。ニシムタの大きな店内には何万点、いやもっとかもしれない、数多くの品物が売ってあり、店員さんもそれの全てを把握することはかなり難しい。どうだったかな?と不安になる店員さんの気持ちも理解は難しくない。

しかし「本格的なものじゃないと困りますね」

彼はまっすぐな目で言い放つ。厳しさの中に決意と覚悟が滲んでいた。遊びじゃないんだ、そう諭す大人の目つきだった。妥協ができない、彼の長所でもあり時に短所でもある部分だ。

 

あ、これですね、ありました。

 

NIKEの文字の刻まれた本格的なバスケットボール。手触り、空気の抜け具合を確かめながら彼は頷く。

 

「とんでもないことになりそうだな」

 

横に陳列されたヘッドバンドを二つ買い物カゴに入れ彼はレジへと歩き出す。

 

レジで彼は堂々と店員さんに伝えた。

 

「領収書の宛名は、FMさつませんだいで」

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ニシゾノマサト

 

あまりに順調だった。うまくいきすぎている。

飛行機は順調に空路を進む。体は軽い。まるで浮いているように。喉の調子も良好。空港で買ったのど飴がよかったのだろう、完全に仕上がっている。ずっと聴いてきた曲についても、頭に、いや、体に完全に入っている。手応えがある、いい夜になると。だが、だからこそ、怖かった。最高の状態だからこそ、最悪の想定をしなければならない。勝利を確信し油断したところに落とし穴がある、彼はそれをよく理解していた。

「最後かもしれないだろ」

彼がよく吐くそのセリフにはそんな浮き足立つ皆をいさめる意図がある。だが、あまりに盛り上がっている時に急に言い放つので、彼はよく、場の空気に水を差すティーダ野郎だと誤解された。

機内アナウンスが流れる。

「まもなく鹿児島空港へ着陸態勢に入ります」

 

いよいよですね、と声をかけると、彼は一瞬こちらの声にびっくりした表情を見せたがその後、にこりと笑いこう答えた

 

「最後かもしれないからな」

 

 

 

2015年 北九州

 

あまりにもいい手応えだった。なおきの結婚式の二次会、なおきの北九州の大学の友人、会社の同僚達というアウェーの場において、ごうりんマスチャー(のちのチャーマス)という川内勢は場を掌握したと言っていいほど話を盛り上げた。

 

これは次でいけるな。

 

ああ、いける。

 

結婚式の一次会、中学からの友人なおきの結婚式は笑顔と祝福、拍手に包まれ進行した。ごうりんマスチャーも友に祝福を送った。だが、それだけで終われる男達ではなかった。

 

なおきを題材にした漫才をやろう。

 

いつも、ごうりんの提案は突然だ。急に突拍子もないことを言い出す。考えたことを即実行するというと言葉が良すぎる、行動すべきことを行動の直前にならないと思いつかない、という方が正しいかもしれない。今回もそうだ。結婚式が終わった後、二次会の会場へと移動する空き時間に、ごうりんは中学からの親友マスチャーに声をかけた。マスチャーは答える。

 

やるしかないな

 

どう考えても、やるしかない訳がないが、彼らにはやるしかないのだった。やらない選択肢はない。しかし二次会が始まる時間は迫っている。ダイソーを探し、スケッチブックとマッキーペンを買う。自然と早足で売り場をまわる。やがて目的のものを購入し、ホテルの部屋で2人はスケッチブックに絵や文字を描く。これを見せながら漫才をしていくというスタイルだ。

二次会の時間になり、いくぞと鼻息荒く飛び出そうとしたごうりんに、マスチャーが声をかける。

 

二次会ではまだ早い、三次会でやろう。

 

ごうりんには最初、マスチャーの言った意味がわからなかったが、マスチャーが言うならそれが良いのだろう。スケッチブックはバッグに忍ばせ、その時を待つスタイルへと切り替えた。

 

 

始まった二次会。なおきの北九州の大学の友人、会社の同僚達に混ざり、アウェーの川内勢の2人。(本当はえいちゃんも居たので3人)アウェーの場にめっぽう強いのはマスチャーだ。アウェーでもなんでも切り開く突破力が彼の言葉にはある。いじっても許してくれそうな人を見つけ出し、独自の切り返しで責め立てる。

その世界観の風呂敷を最大限に広げ、巻き込む人数を増やしていくのはごうりんの得意技だ。2人が織りなす渦は、やがて大きなうねりとなり、酒が入っていることもあり、熱気を帯びていく。

完全なる盛り上がりを見せ、二次会は終了した。

 

3次会もいきますよね?なおきの北九州の大学の友人に声をかけられる。もちろんです、と頷く2人。

三次会の舞台はカラオケだった。

 

 

本来、歌って飲んで盛り上がるカラオケで漫才をやるのか?数曲歌が歌われ、場も完全に盛り上がった時に2人は切り出した。

 

 

新郎なおきくんを題材にした漫才を披露してもいいっすか??

 

 

 

 

2021年 鹿児島溝辺空港

 

 

鹿児島空港一階到着ロビー。17時25分到着の便は定刻通りに着陸したたアナウンスが流れる。やがて少し経つと到着ロビーのドアを過ぎる何人かの人たちを見送り、5、6人目だろうか、黄色い上着を着た男がこちらへと向かってくる。ごうりんはそれを見つけると、手を振るでもなく、大声を出すでもなく、ただその場で待った。そうして2人はあっさりと対面した。

 

実に1年9ヶ月ぶりくらいの対面にも関わらず、2人は3日ぶりに会った友人のようにあっさりと合流した。派手な挨拶や再会の儀式などいらない。マスチャーの鹿児島滞在は残り14時間ほど。目的がはっきりしていれば、行動はいたってシンプルになっていく。空港駐車場へと向かう2人の歩みは力強く迷いがなかった。

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1999年 川内

 

「なんで漫画書いたり遊んでばかりいるごうりんマサトの成績が上がって、僕は下がるんですか」

なおきは塾の担任仲間先生にたまらず言い放った。

「まあ、あいつらは、まあ、気にするな」

 

塾の先生といえば成績をあげさせるプロ達だ。地道な計算問題をこなし、単語を何度も何度も復唱し体に染み込ませ、テストの傾向から分析された問題をこなし、地道に地道に成績を上げていくのが受験勉強において成績をあげるプロセスだ。その成績をあげさせるプロ達にもよくわからない成績の上がり方をしているもの達がこの鶴丸予備校Aクラスの中にいた。ごうりんとマスチャーである。

 

塾のクラス分けは成績の良い順にSクラス、A、B、Cと続く。なおきや、ごうりんマスチャーはこのAクラスにいた。志望校は川内高校。Aクラスはまあ大丈夫と言うラインだ。受験生というものは過酷だ。親からのプレッシャーや受験に落ちたらというプレッシャーを抱え、人生の全てがそれで決まってしまうような閉塞感を感じてしまう。なおきもまたそれを感じ、焦り、悩んでいたんだろう、遊ぶ時間も削り必死に彼は勉強した。しかし思うように成績は上がらず、むしろ下がり、このままではBクラスに移動になるかもしれないという塾の担任との面談の中で言われ、なおきは激怒した。何故、塾で漫画を描いたら遊んでいるごうりんマスチャーは成績が上がり、俺は下がるんだ、と。15歳の青年の悲痛な叫びだ。

塾の先生にもわからない。何故あいつらの成績が上がっているのか。何故なら彼らは塾の自習時間に漫画を描いている。それを周りの友達に見せて笑っている。自作の足フットテストという問題文の大事なところが足跡で隠れているというテストも自作し、トップクラスの子達に解かせたりしている。勉強しろと怒らなければ示しがつかない、周りに悪い影響を与えかねない危険分子だが、そうできないのは、遊んでる彼らだけでなく、その漫画を読んだりテストを解いている生徒の成績が上がっているからだ。

 

成績をあげるために塾の先生はいる。ならば口出しは無用。というか、何故上がっているのかも先生を持ってしてもさっぱりわからない。

 

まあ、あいつらは、まあ気にするな。

 

 

それが先生に言える最大限の言葉だった。

 

 

 

2021年 溝辺

 

空港を出て、車に乗り込む。BGMで流れる弾き語りの音楽。2人はそれに合わせて声を出す。英単語だろうが、歌だろうが、何度も声に出して、体に染み込ませる。中学の頃の塾の手嶋先生の教えの一つだ。

CUBEの車内に2人のハーモニーが響きわたる。

鹿児島溝辺空港から川内へと向かう道は容易な一本道ではない。いくつもの山を越え、時に細い道へと入る過酷な道だ。ごうりんが道を間違えそうになるたび、「そこを右だと言ってるだろ」ナビ軍曹となったマスチャーが声をあげる。「18時だ、ツイートをしろ」ごうりんも負けじとTwitter軍曹となり、マスチャーのけつを叩く。互いに甘えを許さない、軍曹と軍曹のぶつかり合い。そんな男達の軍曹劇がミッドアウトの根幹となっていることは言うまでもない。

 

目的地は故郷、川内。

何をしにいくのです?と尋ねると2人はこう言い放った。

 

「夢を叶えに」

 

 

 

2015年 北九州

 

カラオケという、本来歌を歌う空間に音楽が流れない。男が2人スケッチブックを抱え、喋っているのを他の大勢が見ている。それは異様な空間だった。スケッチブックがらめくられるたび、笑いが起きる。人々の笑い声に呼応するように、アドリブをドンドン入れ熱を帯びていくごうりん、マスチャーの喋り。新郎のなおきもいじられてるのだが満更でもないように、笑いながらそれを見ていた。今日初めて会った人たちも笑っている。なおきという共通の知人の話題を題材にした漫才はその場の人々に受け入れられた。久しく感じていなかった感触が五感に残っている。3次会が終わった後、ホテルの部屋に戻り四次会、五次会、結婚祝福の祝いの宴は朝まで続く。

 

 

初夜で忙しいはずのなおき(後のモイなおき)はごうりんマスチャーの部屋で漫才を見せ続けられ、朦朧とする意識の中で言った。

 

「面白いわ、こんなに笑ったの久しぶりだわ」

 

 

 

 

2021年 川内

 

「久しぶりでもないかな」

 

車窓から見えてきた故郷川内の街並みを眺めながらマスチャーがつぶやく。

今回の帰郷の2週間前、マスチャーは娘の七五三の為、川内に帰ってきていたのだった。

 

永利のバイパスを越え右に曲がれば川内駅が見える。FMさつませんだいのある、綺麗で大きな駅だ。

九州新幹線開通の際、川内駅は大きく綺麗なものへと変わった。以前は小さな田舎の駅、って感じの建物だったので、かなりの様変わりに驚いた人も多かっただろう。あまりに立派な建物なのだが、当時は周りの風景とミスマッチだった。そのだけ急に近未来感がある建物だったからだ。しかし時は過ぎて、約20年。仙台駅の周りも綺麗になり素敵な建物がたくさんたった。その建物の2階の一角にFMさつませんだいの放送局はある。

 

しかしそんな放送局を右目に、ごうりんはウインカーで左折の合図を出す。

 

「ちょっと待ってください!右折の間違いでは⁉︎」

 

思わずそう尋ねた私の声に、2人は一瞬驚いたような顔を見せ、しかしそのあと微笑んでこう言った。

 

 

「希望を灯しにいくのさ」

 

 

 

レモンエキスJr.(仮名)

 

病室の一角で青年は無気力に天井を見ていた。

消灯時間は早く夜の9時。スマホも、ゲームも持ち込み不可な病室での夜はあまりにも退屈で、あまりにも長かった。もう何日になるか。そしてこれから後何日ここにいればいいのか、青年はわからなかった。治るのか、これからどうする、とか、家族のこと、職場のこと、恋人のこと、考えることはたくさんあったが、やがて何も考えたくなくなり、天井を見つめるだけになった。

 

ある夜窓が少し空いていた。看護師が閉め忘れたのだろうか。夜風が気持ちいい季節はとうに過ぎ、寒いと感じた青年は窓を閉めにベッドを降りた。

 

窓の外の景色を見たのは何週間ぶりだろう。

そこで青年は不思議なものを見た。

夜空を飛んでいく輝くバスケットボール。

星々の隙間を縫うように、東の空へと消えていったバスケットボール。ああ、俺はとうとうおかしくなっちゃったんだな、そう思っていた矢先、今度は東の空から西の空へとバスケットボールが飛んでいく。

その不思議な光景をまた見たくて、青年は毎夜、夜空を眺めた。しかし毎日バスケットボールは現れるわけではない。そしてやがて毎週木曜の夜中に現れるということがわかった。青年は木曜日の夜が楽しみになっている自分に驚く。もう何もしたくない、無気力になった自分の中に微かに希望が芽生えているのを感じる。

 

生きても、いいのかもしれない。

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2021 川内FMさつませんだい

 

夕方の放送を終え、掃除や片付けを済ませて彼は最後の施錠をする。

 

まあ今日はまた、夜来るんですけどね

 

誰に言うでもなく彼はつぶやいた。あたりはもう暗くなっていた。日はだいぶ短くなった、11月、今年ももう年末が見えてきた。不満がないわけではない、だが、何かに支障があるほどのものでもない。毎日はあっという間に過ぎる。

 

しかし今日はいつもとは違う。

深夜、来訪者があるのだ。

 

施錠しようとしていた手が止まり、もう一度ブースへと駆けていく。マイクを磨いた、ケーブルをメンテナンスおっけー、加湿器はどうだ?うん!動くな。コロナ対策のアクリル板ももちろん設置した。やり残したことはないか?彼らが思う存分ここでやり切れるように、その場を整えるのが自分の仕事だ。

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もう何度目だろう、頭の中でシミュレーションする。オープニング曲がかかり、キューを出す、彼らが喋り出し、メールを印刷し、ここでジングル。よし、いいぞ。だがいつも途中でイメージトレーニングは途絶える。オチの部分が出てこない。

 

やってみなきゃわからねぇ、っつうことかい。

ラジオ局に勤めもう8年。

ラジオの神様は今夜、どんな結末を見せてくれるのか。

 

イメトレはもうやめだ。

FMさつませんだいの施錠を済ませ、コートの襟をたて、楠元は一度、家路へとついた。

 

 

2016年4月7日 大阪

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続・GOGOGOツアーの最中。ごうりんは大阪の街にいた。大阪の漫画喫茶に宿泊し、寝たり、漫画を読んだりしてツアー合間の疲れを癒していた。GO!と言うアルバムを555枚売るまで終わらないツアーの真っ最中、ごうりんはマスチャーにLINEをした。

 

ツイキャスというアプリで離れたとこにいてもラジオができるらしい、一緒やってみない?

 

なおきの結婚式でのあのやりとりが頭に残っていた。ラジオ番組がやりたい、とボヤケルズメンバーや1人で時々配信番組をしていた。しかし、うまくいかず続かない。なんというかこう、燃え上がるような面白さが湧いてこないのだ。

 

しかし去年末なおきの結婚式でのあの漫才やそのやりとりの中に、自分の探し求めていたものを見た。中学生の頃、いつも味わっていた感覚。塾やタカリンの家で味わっていた、まさとと一緒に作り上げるラジオ、漫画、ゲーム、ヘディング家族、あの感覚。そうだあれだったんだ求めていたものは。

 

そうして、ラジオにマスチャーを誘った。

マスチャーも面白そうだやってみようとなった。

離れたところにいてもできるなら、家族や自分の生活を守りながらやれそうだ。

ごうりんも考えは同じだった、ツアー中でもできるし、熊本震災以降俄然強くなっていた気持ち・鹿児島に戻りたいという気持ちを叶えつつ、ラジオもできるかもしれない。ツイキャスラジオはそうやって始まった。

 

そのラジオの名をミッドナイトゲットアウトとした。

深い意味はない。GET OUTというゲームを以前作って自分たちの中に残っていたというのと、深夜ラジオだから、それにミッドナイトとつけた。なんかやたら長く意味のわからない感じのタイトルが自分たちらしく感じた。

 

第一回の放送。決して聞きやすくはなかったかもしれない。それでもツアー先やバンド活動を通じてファンになった方々が聞いてくれた。マスチャマも最初はかなり遠慮がちに、しかし持ち味のアウェイでも実力を出す感じは出しながら放送した。放送後、2人は早く次回やりたいね。と話す。

 

大学、社会人と大人になりお酒を飲んで昔を懐かしむ機会が増えていた。それも良い。美味い酒だった。

 

しかし、ミッドナイトゲットアウトが始まり

中学高校の最高の遊びの続きが始まった。

そんな感覚を2人とも味わっていたことだろう。

 

 

midnight get out

 

真夜中に出ろ

 

日常の家の団欒から、真夜中に一度出ろ

そしてまた遊びの続きが始まる

 

実に不思議なタイトルだ。

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2021年 川内ラーメン宝島

 

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とんこつしょうゆラーメンはラーメン宝島の昔からあるメニューだ。中学生くらいの時か、宝島の高城店時代、チャルメラ号が実家の前に来た時によく食べていた。そのラーメンを今も食べているのはなんだか感慨深い。店主のゆういちろうくんはゆっくりしていってください、と言う。それに甘え、ひとときの休息をつく2人。優しい表情の奥にいつも張り詰めた糸のようなものがあった。それが一瞬緩んだ唯一の時間かもしれない。

 

頃合いか。

 

ああ。いこう。

 

PM9:00 向田公園。

人気は少ない。というか、誰もいないと言っていい。

コロナの影響もあるのだろうか。

土曜の夜にしては少し寂しい風が向田公園に吹いている。

 

ごうりんの手にはバスケットボール。

右手だけであっさりとボールを掴んでいる。

側にバスケットゴール。

その姿はバスケットマンそのものであった。

 

向き合うごうりんとマスチャー。

今まさに、1on1が始まる。

 

観客がいたらそう思ったに違いない。

 

ごうりんはおもむろに、ボールを天に放り投げた。

一度浮き上がったボールは地球の引力の力で、地面へと落ち始める。そこにすかさず体をグッと入れ、デコのホット・ヘディングスポットに当たると、硬くて重いはずのバスケットボールが、面白いように天高く飛びあがる。

 

「いち」

 

ボールは大きな弧を描き、マスチャーの元へと飛んでいくマスチャーは2歩ほど横にずれただろうか。重心低く一度屈み、膝を使って、ボールをヘディングしてみせた。

柔らかい筋肉を持っているのだろう、ボールと頭が当たった音すらしない、世界で1番優しいインパクトと言われるのも納得だ。

 

「に」

 

ボールはまた大きく大きく、夜空を煌めきながら飛んでいく。

 

まるで終わりのない花火のように美しかった。

 

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レモンエキスJr.(仮名)

 

人の心というのはいつも絶妙なバランスで均衡を保っているのかもしれない。彼は自分のため息がここ何日か増えていることに気づいている。あんなに毎週楽しみにしていた夜空のバスケットボール流星(と彼は心で呼んでいた)が今週の木曜日、何故かなかったことが、こんなにも自分の心にダメージを与えるとは思わなかった。それはつまり、それほど毎週楽しみにしていたということの裏返しだった。いや、確かに木曜日に流星は降った。だが、次の木曜も流星が降る保証などどこにもない、誰もしてくれない。

いつだって、なんだってそうなのだ。

明日朝日が上がると誰が保証できる?明日も生きていられるなんて誰にも分からない。

 

最後かもしれないだろ?

だから、今を生きるしかないんだ。

 

涙が目から溢れた。

 

病気をする前は、明るい性格だった。友達もいた、異性にもそこそこモテた。だが、病気をして、長くいつ終わるともわからない入院生活。無気力になり、もう何をしても無駄だと思っていた。何もかもが嫌になった。そんな自分が、木曜日に降る流星のおかげでここまで来れた。

あの流星には、希望を沸き起こす不思議な力があった。

あの流星を見るたびに、体にもう一度命が芽吹いていくのがわかった。

だからこそ、だからこそもう一度。

あの流星が見たい。

もう流星は降らないのか?

 

もし、もしもう一度あのバスケットボールの流星が見れたとしたら、有難うと言いたい。

 

そして自分も、誰かに希望を与えられる人間になりたい。

 

 

ふとカーテンの隙間から強い光が刺すのを見た。

 

 

この光!?まさか!?

 

今日は土曜日だぞ!?

 

 

楠元貴宏

 

家族との晩御飯。彼にとって1番、いや唯一、心の休まる時間と言っていい。ラジオ、ラジオの生活を送ってきた。

 

台風が来たら、雪が降ったら、大雨が降ったら、局へ出向き、情報を集め、市民にそれを伝えることが自分のつとめ。宿命だとさえ思っている。だからこそ、家族との時間は少なくなってしまいがちだ。

 

このご飯美味いな!エピソードトークで話していいかな?

 

おお、テスト100点だったのか?すごいな、ラジオで話していいか??

 

君の髪型かわいいね、ラジオで話していいかい?

 

宿命と感じている部分もあったがそれ以上に、バカがつくほどラジオを愛していた。周りに呆れられ、離れていったものもいる。お前といるとラジオラジオと息苦しいよ、おれはもっとラジオ楽しみたいんだよカジュアルにさ。そんな言葉を浴びたこともあった。情熱だけではどうにもならんよ、この世界は数字が全てだ。そう怒られたこともあった。

 

ラジオが好きで何が悪いんだ。

 

彼はどこか孤独だった。ラジオへの愛はいつも空回り、まるでそれはギアのついていないモーターのように、虚しく空回りの音だけが響き渡る。

 

そんなある日、目をぎらつかせた、ひとまわり歳下の男達と出会う。

人気はそれほど、結果もそれほど。しかし愛と情熱だけはてんこ盛りのラジオを展開する男達の姿を見て、かつての自分の姿と重なった。荒い、それでいて緩い、だがこのほと走るラジオ愛はなんだ。構想にあったFMさつませんだい、ど深夜帯の番組として彼らを迎えられはしないだろうか。

社内には反対の声もあった。だが、彼らと創る番組は必ず、FMさつませんだいを代表する自社番組になる、そう確信し、多少強引に彼らの番組を弊社へと招き入れた。

 

今日はそんな彼らがいよいよFMさつませんだいのスタジオに集う初めての日。今まで録音で放送していた27時から29時の枠。いつかスタジオで生放送を、という話は番組開始当初からあった。しかし番組開始と共に覆ったコロナ禍、遠距離ラジオゆえの2人を呼び寄せるほどの交通費の確保、課題は山積みで、スタジオ生放送の話は、まあいずれ、いずれといういつかくる未来の話に落ち着いてしまっていた。

 

だがラジオ愛のみをガソリンに走る2人は、苦境をものともせず2021年11月、いよいよスタジオ生放送の企画書を提出してきた。

 

かつての自分の姿が重なる。

空回りしているモーターのような自分の姿。

ただ虚しく回転音だけが響いていた。

あの時の自分。

 

ならば、自分がギアになればいい。

自分はモーターじゃなくていい。

彼らのモーターはこのままでは空回りするだろう。

だから私がギアとなって、この社会とつながることができれば

それは小さくとも確実に、この閉塞感漂う世の中に何か一石を投じれるのではないか。そんな予感があった。いや確信に近い。

 

スタジオ集合の時間は夜10時。少し早いが家を出た。まだ9時すぎじゃないか。流石に早い。まだ彼らはスタジオには来ていまい、そう思いつつ口元が緩んでいる。

 

3号線を南へ。ふとした信号待ち、向田の交差点でふと空を見上げると、バスケットボールが空に舞い上がっているのを見た。

 

もしや。

 

 

集合時間は10時だったはず。

あいつら、ったく、無茶ばかりやりやがってよ。

 

車は進路を変更し

向田公園へと向かう。

 

 

向田公園

 

ごうりんとマスチャーの間に、もしかしたら言葉は不要なのかもしれない。普段のラジオでは言葉を巧みに扱いラリーを交わす2人だが、バスケットボールをヘディングし合う2人を見ていると、それすら、いらないのかもしれないと思ってしまう。それほどボールは雄弁だった。普段我々は想いを言葉に乗せてコミュニケーションを取る、しかし、鍛え上げられたヘディング家族達にしてみれば、想いはボールに乗せられるのかもしれない。

 

しかし、思いだけではどうにもならないのがこの世の常だ。移動、そして綿密な打ち合わせ、2人の疲労は限界をとうに超えていた。膝が笑う。俺たちが笑わせたいのは膝じゃない、リスナーだ。なのに情けないことに、体が動かなかった。ヘディングを続けたい、だれかの希望でありたい。その願い虚しくボールは地面へと落ち、それと同時にごうりんマスチャーも地面へと崩れ落ちた。

 

自分たちのやったことに悔いなどはない。

 

でもバカだよな、ラジオやりにきたのに、ラジオやる前に倒れるなんて。

 

視界がぼやけ、意識が遠のいていくのがわかる。

やりたいことに全力でやった。リスナーのみんな、すまん。それだけが心残りと言えば心残りだった。

 

確かに君たちは大馬鹿野郎だよ。

 

 

向田公園に、いや、向田の町中に響いたのではないだろうか。

腹の底から出ている声。大きい声なのに不思議と包まれているような心地よさ、このラジオマン特有の声の主はまさか!?

 

 

「君たちみたいな大馬鹿野郎は久しぶりだ。

おかげで目覚めちゃったじゃないか

自分の中に眠る、大馬鹿クスモンがね。」

 

FMさつませんだい、楠元貴宏さんがそこに立っていた。

 

「集合時間は10時のはず」

 

「つもる話は後だ、さあ、2人とも立てるな?」

 

「全く、人使いの荒いひとだ。」

 

「だが確かにまだ夜の9時、寝るには早いってことっスね」

 

「君たちがモーターならね、私がギアになるよ」

 

モーターの例えは、ちょっと意味がよくわからなかったが、でもなんか良いこと言ってそうな雰囲気から、雰囲気だけでごうとまさとマスチャ話は頷き微笑んでみせた。

 

 

椅子の足は2本では支えきれず倒れてしまう。

だが、3本ならばどうだろうか?

三角形の形が安定感を作り出し、明日は倒れることはない。

 

3人の描く三角形は、安定感をうみ

また夜空にはバスケットボールの花火が咲いた。

 

打ち上がってはまた落ち、打ち上がってはまた落ち

何度も何度も

今度は途切れることなく、咲く。

 

 

レモンエキスjr(仮名)

 

流星が途切れた!?

確かにバスケットボールの流星が降っていた。土曜の夜。何が起きているのかはわからない。曜日の法則性が変わったのか、以前は毎週木曜日に降っていたバスケットボールの流星は、今確かに土曜の夜、降っている。だがいつもと少し様子が違うようだ。今日は真上に上がり、真下に下がる。以前は西へ東へ流星は行き来していたような。

 

いや、曜日だとか、放物線の形など、細かい違いはどうでもいい。どん底まで落ちた自分の心にまた希望を灯してくれたあの流星に感謝を伝える時が来た。

 

そう思っていた矢先、ボールの流星は途切れた。どうしたというのだろう?

有難うと窓を開けてすぐに叫べばよかった。

もう終わってしまったのか??

夜空は漆黒に包まれ、返事をすることはない。

夜は怖いほどに静かに世界を包む。

 

もうだめかと、諦めかけていたその時、またバスケットボールが輝きながら大きく大きくさらに打ち上がる。

 

心なしか、さっきまでよりも強く輝き、強く打ち上がっているように見えた。何度も何度も、落ちては打ち上がり落ちては打ち上がる。そのポイントはこの病室からそう遠くないように見えた。

 

病室を飛び出し、青年は走り出した。

 

 

あの打ち上がっている場所に、行ってみる。

誰が打ち上げてるのか、それとも勝手に打ち上がっているのかはわからない。

 

ただ、有難うを俺は伝えなくちゃならない。

最後かもしれない。

最後かもしれないだろ。

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2004年 吹上浜キャンプ場

 

最後かもな、こうやって集まれるのも。

まさとが言う。

古垣団の他のメンバー、ごうりん、たかりん、なおき、ゆうちゃんはキョトンとまさとの顔を見る。

 

俺たちはいずれ何年後か社会人になって、働き出すだろ、結婚とかして子どももできたりさ、そうなったらこうやってみんなで集まるのも難しいだろ。

 

いやいや、来年もやろうよこれ。またできるだろう。

 

ごうりんが割って入った。

こういう意見を出す時、大概2人はぶつかる。

まさとは慎重派、ごうりんはイケイケ派だ。

 

毎年恒例にでもすればいい、漫画描いてさ、コント作ってさ、そういうことこれからもやっていこうぜ。

 

俺たちはもう中学生じゃないんだ、高校生じゃない、大学生だ。今は住んでる街もバラバラで、働き出したらマジで時間ないだろ。現実的に考えたら無理だろ、まあわからんけど。

 

まじで中学高校の頃暇だったもんなー。

 

いつもたかりんち集まって、何するでもなくさ。

 

たかりんが帰れっつってたもんね。笑

 

なおきが頷きながら答える。

 

面白かったと思うんだよなー結構俺たち。

GET OUT とかさー、ビリヤードとか

あれ、電車の荷物置きみたいなとこに放置してたら誰か読むかな?

 

いや気づかないんじゃねえかなあ?

 

いやー読むと思うなーそれ読んだ人の反応とか見たいよね。びっくりすると思うんよなー。

 

いつもたかりんちの中や、限られた仲間にしかみせてないもんね、えのきやとか。

 

いやー不特定多数の人たちに見せられたらいいのになー。

 

そんなことできんだろ。笑

 

反応が見たいわー。

 

 

 

2021年 向田公園

 

はあ、はあ。男たちの息は荒い。

10回。10回ボールをヘディングすることができたら、このコロナ禍の中、孤独を感じているみんなに少しでも勇気を与えることができる。3人の中でヘディング家族の10回連続達成、それが目標となっていた。10回、言うのは簡単だ。しかしその実現には想像を絶する技術、精神力、運すらも必要になる。そうでなくとも、さっきまで立たこともできなかった2人もいる。どうに限界を超えた先の肉体だ。ボールのカウントは、二桁の大台になることがなく、時間だけが過ぎていく。

 

最後だ。これを最後としよう。

 

切り出したのはマスチャーだ。退路をたつことで自分たちの残りの集中力をここに全て注ぎ込むと決めた。

 

これを使ってくれ。ごうりんら取り出したのはNIKEのヘアバンドだった。

 

これだよこれ。これがあれば楽勝だ。

 

楽勝という言葉が強がりなのは誰が聞いてもわかった。だが、これは自分への暗示のようなものだ。

 

張り詰めた糸が切れないよう、3人はギリギリだった。

 

いくぞ。いち、に、さん

 

この辺りまではいい。三角形の陣形が崩れないよう、お互いに声を掛け合う。向田の上空に吹く風も穏やかだ。いける。行けそうな空気が完全に出始めている。やはり退路をたつことが運さえも呼び込んだ。

 

よん、ご、ろく

 

順調にヘディングは続いていく。

 

なな、はち、きゅ…

 

 

8回のヘディングを終えたボールが上昇を止め、やがて地面へと進行方向を変えた時、次はくすもとさんの射程へと入る。迷いのないいい目をしている、大丈夫だ、そう思った次の瞬間。

 

ニャーン

 

 

黒色と白色の混ざる毛の猫が不意に楠元さんの元へと駆け寄る。

楠元さんと言えば、野良猫どうしの喧嘩を止めに入るほどの猫好きで知られている。

 

ヘディングを優先させれば、猫の身が危ない、だが猫を庇うとなるとボールは…

 

 

楠元さんは猫を抱え、その刹那、体を捻り、下半身のバネで反対方向へとジャンプ。なんとかバスケットボールを頭で捉えることができた

 

きゅう!

 

 

しかし、無茶な体制から放たれたボールは真上に飛ぶことはなく、明後日の方向へ。

あまりにも低い弾道でライナーのように飛んでいく。

 

これにはごうりん、マスチャーも反応できない。

 

もうだめだ。

 

終わった。

 

そう思っていたその時、見覚えのない青年の影が走り込んでくる。

 

有難うございます!!!

 

見知らぬ青年が走り込み、何故か感謝の言葉を述べ、お辞儀をしたその頭に

バスケットボールは当たった。

 

その瞬間、ごうりん、マスチャーは声を高らかに宣言する。

 

(誰か知らないが青年)

ありが10(とう)!!!!

 

 

 

 

2055年 わかまつことは

 

新田神社での戌の日を終え、女の子は妊婦とは思えない軽やかな足取りで階段を降りていく。そんなに急いで降りなくても、危ないよ!旦那さんだろうか、男が声をかけ後ろをついていく。

 

私のお宮参り、ここに来たんだって。

 

エクスチェンジ・ギャラックマシンに乗り込み、2人は窓の外を眺め、川内シティの街並みを眺める。

 

そしてここ、今はもうゲートステーションになってるけど、昔は市営グランドってのがあったんだって。パパたちが小さい頃コントとかやってたって。

 

野球とかじゃないんだねーグランドってキャッチボールとか、そういうのやるとこだったんでしょう?昔って生身でそういうのやってたんだよねーウケる。

 

パパはスポーツは全然だめだったみたいでねー。

私もコントってやってみたいなーお題とか出し合って。

 

そうだ!うたまんNEOの時間までまだあるし、コントやっていかない?

 

いや、夫婦でコントて。

てか時間あんまないし。

FMさつませんだいいこ。

パーソナリティ来ないと局の人困るでしょ。親衛隊達も。

 

 

2021年 11月13日 FMさつませんだい

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ここを繋げばいいんですけ?

自宅から持ってきたMac miniをごうりんが電源に繋ぐ。

ちょっと待って、ごうりんがそこでパソコン作業するなら

俺もこっちでやるわ。

 

やることは案外、あるな。

 

それは確かに仕事だった。

なのに何だろうこのワクワクは、高揚感は。

パソコンの前に3人、各自が座りおのおの分担し、今やれることをやっていく。

ごうりんはヘディング家族の編集と、ZiKUさん、タケシくんのコメントの編集を。

マスチャーは台本の整理と音、そしてネタメールのチェック。楠元さんはネットサーフィンで電脳世界の荒波を乗りこなしていた。

3人の頭には、ラジオを面白くすることしかなかった。そのためなら、何だってやろう。時間の許す限り。

 

音の編集が終わり、台本も上がり、ひと段落ついた。楠元さんはミキサーでの音チェックや印刷物の印刷などに追われる。

 

ごうりんはおもむろにギターを取り出し、そして銀の棒をマスチャーへと手渡す。

 

メジャーボウイとなの刻まれたブルースハープだ。f:id:midout:20211117010417j:image

 

ごうりんが6つの弦をかき鳴らし、マスチャーが10個の穴に息を吹き込む

 

何もなかった大地に、草花が生い茂り、そこに森が現れたかのような錯覚。

 

音楽がまたとてつもないパワー。

音楽には形がない、手では触れられない

だけど、心に触れられる。

 

楠元さんのミキサーチェックの手が不意に止まり

瞼に溜まった涙を拭った。

 

 

かき鳴らされた曲は

マスチャーやごうりんが移動中に聞いていた

あの弾き語りの曲だった。

 

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2020年6月 LINE

 

「サラリーマン的思考だなぁ」

 

 

ごうりんは熱くなりついそんなLINEを返してしまった。

悪気はない、だが自分の大事にしているものを大事にしてもらえてないように感じてしまって、ついごうりんは冷たい返事を返した。

 

コロナウイルスが世界を覆って4ヶ月ほどになるか。未だに世界はどうなるかわからない、今年中に、いや来年もなのか、とにかくこのコロナとの戦いは、長引くという見解もある。とにかく先は見えない。

 

そんな中、5月からはじめた4コマ漫画の制作。ごうりんマスチャーにとって漫画というフィールドは、ラジオと同じくらい、いやさらに深い原点ともいえる。コロナ禍でライブイベントの延期や中止の相次ぐごうりんには時間があった。漫画もやってみようじゃないかと2人で話し、SNSに毎日一個ずつ、4コマ漫画を投稿している。

 

手応えはあった。おもしろいものを投稿している自負がある。

ペンネームおかえりタカリンで投稿しているのも良いのかもしれない、普段のごうりんの、またはミッドアウトの活動と完全に混ざり合わないところがいい。別人格がまた出来たような感覚。

 

大学在学中のキャンプ以来、消息不明、連絡の途絶えた古垣団の親友、タカリンへのメッセージを込めたペンネームを2人は気に入っている。いつか、また会えるんじゃないかと信じている。

 

変化が起きたのは6月のある日。ある小さなベンチャー起業から、4コマ漫画を描いてくれとのオファーがインスタのメッセージからきたのである。

 

これは詐欺か?と思ったごうりん。すかさずマスチャーが検索をかけ会社の概要を調べる。その会社は確かに存在し、社員の名前も一致する。話聞いてみよう。

 

新しく作っているSNSのアプリの開発を進めている企業でら阪神タイガース関連の仕事が舞い込んできて、その大一番、ちょっと変わった戦略で攻めたい、その際、おかえりタカリンさんのちょっとヘンテコで笑える漫画で宣伝できないだろうか、と奇跡のような白羽の矢が立ったのだった。

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もちろん答えはイエス。ただ、報酬、いわゆるギャラの件で2人の意見はぶつかる。

2人でのギャラの折半の話ではない。企業からそもそも、おかえりタカリンとしていくら請求するかの話だ。

フリーランスのクリエイターにギャラ交渉はつきものだ。依頼の際、お金の提示のないものも少なくない。クリエイトは時間のかかる魔物だ。いくらでも時間を食らい、その割に少ししか成長しない。だが、悔しいかな、時間をかければかかるほど、クオリティはあがる。問題は、それだけ時間をかけてやって、その対価はいくら払われるのかという点だ。だが実際、お金の提示でそれが予算オーバーと判断され、安くつく方に仕事が流れることは稀ではない。交渉段階でのそのせめぎ合い。安くした方が仕事の取りこぼしはないが、自分の仕事の安売りになる。高くすれば他の人は仕事が流れ、結局仕事がもらえないケースもある。売れっ子ならば問題なかろうが、普通のクリエイターにはしんどい交渉だ。

 

実績がないおかえりタカリンを起用してもらえるのならばギャラは少なくてもいい。というマスチャーと

クリエイトするものにはお金をしっかり払うような企業とじゃないと仕事したくないと主張するごうりん。

 

仕事として、逃したくない。

まだおかえりタカリンに仕事を振ると決めたわけではない起業の立場に立てば

ギャラは安く提示した方がプラス材料だろうというマスチャーの考えは、確かに納得できる。

 

だが、絵を描き、実行部隊であるごうりんは違う。多くの時間と労力を注ぎ込むこの作業を安売りしないでくれ!その気持ちが、サラリーマン的思考だなぁという冷たいLINEの返信へとつながる。

 

「そんな言い方は悲しいよ。」

 

普段あっけらかんとしているマスチャーには珍しく

感情を前に出したLINE返信だった。

 

 

ちょっと電話で話そう。

文章じゃだめだ。

 

 

2021年11月13日 FMさつませんだい

 

まさとくんはただの会社員ですからね。

 

おい、それをいちいち言うなよ。俺はな、それをウリにしてないんだよ

 

いや、そうなのにこんなラジオブースで喋ってたすごくない?って言いたくてさ。

 

 

番組開始早々の2人のラリーである。

打ち合わせつぐ打ち合わせ、曲のリハーサルを経て、ついに本番は始まった。FMさつませんだいスタジオA、加湿器がコウコウとMステの地面下のような白い水蒸気を出している。アクリル板を挟み、2人は言葉のラリーを交わす。

 

身振り手振りを多く話すごうりんにマスチャーがツッコミを入れる。

普段の遠距離ラジオが体に馴染みすぎて、目の前に実態としている相手の姿に逆に違和感を感じるのだ。

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それでいい。

楠元が小さな声でぽつりと呟くを聞いた。

 

その違和感すら楽しめばいい。ラジオは始まったばかりだ。時刻は午前2時3分。外には2人が集って喋っている現地生放送の様子を見届けようと熱心なリスナーの姿もあった。11月、コートでも寒い冬の真夜中である。

2人ができるのはトークホッカイロ。話でせめてポカポカになってもう他ない。

自然と話しにも熱が入る。普段と違う感じに戸惑いつつもリスナーからのメールやお互いの掛け合いにいつもの余裕を取り戻していく2人。肩の力は少しづつ抜けていく。

 

モーターが暖まってきたな??

 

楠元が2人の微妙な変化を感じとる。

今だここでブースト、と。

 

するとここで

少し呂律の回らない音声メッセージが流れはじめる。

 

 

役所タケシ

 

飲み会行ったつもり貯金の封を開けた。コロナ禍でなかなか最近は飲みに行ける機会がなかった。その分を、飲みに行ったつもりで、貯金箱に飲み代を入れるというもの。こういう何気ない飲みこそが、自分の生活、仕事のガス抜きになっていることがよくわかった。いったつもり貯金も貯まったのだが、心にモヤモヤとガスも溜まっている。

 

封を開け、ひさしぶりに街へ出た。通りを歩く人たちの表情、風に揺れる赤ちょうちん、呼び込みの威勢のいいにいちゃん。久しく見ていなかったこの光景に胸が躍った。

 

後輩と待ち合わせの飲み屋に到着。彼はまだきていなかった。それもそうだ、早く着いたのは俺。店員さんに席に案内され、お飲み物揃ってからですか?と聞かれた。少し迷ったが、いや、生ください。とお手拭きで顔を拭きながら答えた。

 

生が到着した。ジャッキに水滴がついている。キンキンに冷えた生。夏に飲む生も美味いが、秋に飲むビールも美味い。ちなみに冬も、春も。ビールは全季節対応型アルコール飲料やで。

 

やがて後輩が到着し、生をおかわりし、後輩のレモンハイ、肉三種盛り、だし巻き卵、合鴨ハムをとりあえず注文。

 

お互いの近況などを話す。悩むことなんてナンボほどでもあんねん。シンガーソングライターとはつまり人生やから、どう生きるか。生き様がそれすなわち音楽になるんや。

だからこそ、どう生きるのか。

生ください、それは、つまり、生きたい!という生への渇望に他ならんのや。

 

他愛もない話、それをつまみに飲むレモンハイ、ここ"上弦"はつまみも絶品や。

 

コロナ禍の中、乾いていっていた体に染み込む。染み込みすぎるといっていい。

 

飲み会時間泥棒がいるとしか思えない。あっという間に時間はすぎ、まだ話したい気持ちを堪えながら、再開を約束し、後輩と別方向の電車に乗った。

 

いい飲み会には余韻がある。いつになく上機嫌なのが自分でもわかる。

帰りの電車の車窓の景色を眺めながら酔いも手伝って鼻歌を歌う。

いや、鼻歌どころか、もう歌っていたかもしれへん。

曲は長渕剛の"幸せになろうよ04"

 

曲の途中、ハッとした。ハッと思い出した。

幸せになろうよのフレーズの時にふと蘇ってきた

幸せになろうよん、の歌詞。

かつて、鹿児島のシンガーソングライターごうさんとその友達、マサトさんと歌った幸せになろうよん04や。

 

そしてそこから連鎖的に思い出した記憶がある。

 

あかん、剛さん達のミッドアウトなんとかにコメント送るんやったわ。今日までやったんちゃうか??

 

最寄駅で電車を降り、帰宅すると

スマホに向かって喋り始める。

 

呂律が回らないがその辺は許してくれるだろう。

 

お得意のキテレツ大百科トンガリ君のモノマネを

挟みながら、コメントをごうさんに送信した。

 

 

FMさつませんだいブース

 

Twitterハッシュタグ#ミッドアウトスマッシュ で、役所さん酔ってる?タケシさん呂律が…というツイートが並ぶ。しかしタケシくんの愛されるキャラだろう、誰もけしからんと怒ったりする者はなく、朗らかに音声メッセージが再生された。

 

明らかにムードは良くなっていた。DJっぽく曲紹介をしたいというマスチャーの要望もここで叶い、笑いが起きる。いいテンポだ。片方がボケ、片方が受けるという一辺倒になっていない。まるで欧州サッカーのように目まぐるしく攻守が入れ替わる。

パーソナリティ(パーソナリチー)の2人に気負いは全くない。

数字もいつもよりいい。これは行ける。

見えてきた。ラジオ社長の椅子が。

 

すかさず、ごうりんにカンペを入れた。

それを見たごうりんはにこりと笑い、ウインクして見せた。

 

そしてマイクに向かってこう叫んだ

 

 

笑力のコーナー!!!!

 

 

波風たて朗

 

彼は自転車を漕ぐのをやめ、やけに今日は赤信号に引っかかると、焦る気持ちを抑えていた。11月の真夜中、もう完全に冬の匂いが街を包んでいた。口からは白い息が漏れる。

腕時計に目をやる。時刻は午前2時半。

まずいな。なんでこうなった。

 

 

フライヤーの片付けを終え、雑誌類を入れ替え、返品の品をカゴにまとめておく、床掃除の機械をかける。そして夜勤のシフト者がきて、レジのお金を合わせるのを済ませる。タイムカードを押して、ミッドアウトマートの制服を脱ぎ、私服へと着替える。全てが順調。今午前1時、帰って、マイセルフかます時間すらありそうだ。今回の笑力のネタはそこそこ自信がある。まあネタハガキは読まれたり読まれなかったりだが、それはそれでまた楽しいのである。特にこのことを人に話したことはない、別に特段恥ずかしいというわけでもないが、話すほどのことでもない。そもそも、深夜ラジオ、ましてや超マイナーな番組を知っている人も少なかろう。だが、それでいい。それがいいんだと思う。あの深夜のノリ。ほとんどの人が寝静まるあの時間帯に大の大人がコソコソ話してる、それを聞く俺たちリスナー。それはまるで家族と言っていい。下手したら本当の家族より心地よく、自分が自分でいられる空間かもしれない。いつもなら27時から始まるミッドナイトゲットアウトスマッシュ。シフトは25時までなので余裕も余裕なのだが今日はスペシャルだ、現地生放送だ。26時。まあ自転車で急げばお釣りが来る。急いで帰るか。夜勤の方にお疲れ様でしたと挨拶し、店を出る。おお、結構寒い。11月も半ばだもんな。ふと自転車の場所に女性の姿が。スラッとしたショートカットの女性の姿には見覚えがある。同じくミッドアウトマート丸琴店に勤める五十川さんだ。

 

五十川さん今日24時まででしたっけ?帰ってなかったんですか?

 

丹野くん、ちょっと話せる?

 

悩んだ。ミッドアウトの時間は迫っている、だが目の前にいるのはバイト生の中でも1番の美人五十川さんだ。そんな五十川さんが自分と話したいことがあるという。28歳童貞の僕に、五十川さんがなんの話があるというんだろう。

 

大、っ丈夫です!!!!

 

丹野君ってさ、なんかいいよね彼女とかいるの?

 

えっ!はっ、そんな。ですね、いないです。いたことないです。

 

もったいないよねー。

 

いや、はは。

 

磨かないといけないね。

 

磨く?

 

いい服きて、いいアクセサリーつけたりさ。

 

はあ。

 

投資って知ってる?

 

とうし?

 

いや、怪しくないやつだからだいじょうぶ。

知識ゼロでも始められて、お金増やせるの。

色々さ、自分磨くのってお金かかるじゃない。

投資なら、無理なく始められるし、今は自分でじゃなくお金に働いてもらわないといけない時代だからさ。

 

 

なんども僕はいいです、と断ったのだが、それでも随分食い下がられ、そこから投資のノウハウのつまっているという大先生の本を買わされることになった。美女慣れしていない自分は、美女と話せるだけで舞い上がってしまうのだ。13万。そのノウハウ本をまた別の人に紹介すれば紹介料が自分にも入ることになるらしい。今月のバイト代がほぼほぼ消え、そしてこの時間も失った。もう午前2時半。ミッドアウトはとっくに始まってる。

自電車を漕いだ。いつもよりも強くペダルを漕いだ。奥歯を噛み締めた。13万…夜風に乗せて飛んでくる五十川さんの髪の毛のシャンプーの匂いがいい匂いだった。

 

自宅である実家に帰る。アルコール消毒で手を拭き、2階の自分の部屋へと駆ける。スマホでFMぷらぷら、アイコンはFMさつませんだいのものに変えてある。

 

ちょうど、笑力のコーナーをやっていた。

 

自分のネタが読まれる。

やった!

 

やったぞ!

 

 

…ニシティのネタ、おもしれぇなーちくしょう。

 

 

 

与賀原 聡美心

 

月齢は8。半月よりも少し大きな月の明かりを、海の水面がキラキラと反射している。小さな波がその光を砕いて、まるで光がその場で弾けているようだ。大きなヤシの実の葉が揺れる。気圧の高い方から低い方へと流れる空気の動きを風と呼ぶ。この地球を覆う100キロの大気の膜の中で、絶えず空気は動き続けている。それは水もそう、心もそうであると考えるのはとても自然なことかもしれない。

 

中継、まもなくつながります。

 

スタッフの方が声をかけてくれる。

色々な場所で、色々な媒体でヨガの素晴らしさを語ってきた。時に皆と一緒に四肢を伸ばし、呼吸し、こうしたほうがいいよというものがあればアドバイスを。最近始めたYouTubeチャンネルの方も割と順調。それだけいま、世の中が凝り固まっているということなのだろう。

 

番組と中継つながります!5秒前、よん、さん、に、(いち)

 

 

ミッドアウト・ヨガァ

 

 

自然と声にもリバーブがかかる。これもヨガの呼吸法の一つだ。ミッドナイトさんとはまあまあ長い付き合いになる。もう2年ほどだろうか。

日常生活で散々凝り固まっているリスナーの凝りをほぐしたいのですが!と若松さんが相談に来られたのが確か2020年1月。わざわざここ与那国島まで会いにきてくださり、ヨガのプログラム、どのポーズが今1番いいのか、なんども打ち合わせさせていただいた。

 

しかしコロナの煽りを受け、色々な混乱があり、実際に放送でミッドアウトヨガのコーナーを流すことができたのは4月5月からになってしまった。

 

そこから定期的にまたコロナの感染者数などを鑑みつつ、打ち合わせを重ねた。若松さんはこのリモートの時代に、実際に会いにきて話し合うというスタイルを徹底的にとっていました。

このリモートの時代だからこそ、それが嬉しかった。

 

今回、現地生放送という実際にスタジオからお送りする放送スタイルだということを聞いて、ぜひまたヨガも、と声がかかった。中継でやりませんか?と提案したのは私の方からだ。時間も遅いですし、与賀原さんに笑いです、収録でいきましょう、若松さん、西園さんはそういってくれたが、私もここは応えたいと思った。

 

きっと、色々な準備や移動で彼らの体も凝っているはず。リスナーさんたちも夜更かしや慣れない仮眠で体が固くなっている。

 

今こそ、

ヨガの出番ですね。

 

うさぎのポーズをとります。

深く息を吸い込み、成功を願いながら

私はゆっくりと息を吐き出し

 

「ミッドアウト最高〜〜〜〜」

 

 

海の見える大好きな場所で、大好きな人たちへと

エールを送るのでした。

 

 

 

FMさつませんだいスタジオ

 

与賀原さんからの南国エール。ヘディングや、準備、移動であんなに硬くなっていた体は、不思議なほど軽くなっていた。深い呼吸の大事さ。与賀原さんはいつも教えてくれる。

 

タケシ君からのコメント、笑力のコーナー前半戦、そしてヨガといい流れできていた。良すぎるくらいだった。その後のトーク部分での2人のトーク、体が急に軽くなったからだろうか、少しだけ、素人にはわからないだろう、自分でなければわからないくらい僅かなズレが生じていた。

 

序盤ならいい、だが中盤にかけて発生したこのズレは後半、致命傷になりかねない。パーソナリティ(パーソナリチー)の2人はアドレナリンが出ているのでそれに気づいていない。

 

楠元は自分がやらねばならないと思った。

 

自分がギアだ。世間と2人の間をつなげる

虹の架け橋。

 

心を鬼にして楠元は言い放った。

 

「FMぷらぷらの数字が下がっています」

 

 

木村サトシ

 

パシャッ。

 

愛機Canon EOS 6Dのモニターに映ったのはスマホの画面だった。

 

何をやってんだ俺は。

 

スマホから流れる音声。聴き慣れた声だ。1人は自分の会社の上司の声、もう1人はその友達のシンガーソングライターの声。

この2人の声をよく知っている。

もし叶うのならば今すぐこのスマホの先

送り先のスタジオへ赴きたい。

 

そこで思う存分、2人の表情をこのカメラで撮影するのに。

 

FMさつませんだいのTwitterアカウントにブースの様子の写真が投稿される。

 

ああ、違うなーこっちからのアングル欲しいな。

 

この時のまさとさんの表情捉えないと!

 

湧き上がるのはFMさつませんだいアカウントの主へのものではなく、その場にいない自分への怒りだった。

 

本来、彼はあまり気性の激しい性格ではない。

会社でも大人しく、淡々とピンチもこなす能力者だ。

 

しかし、カメラとなると人が変わる。

 

まさとさんと話し、ミッドアウトの剛さんと会い

5年が過ぎた。剛さんが鹿児島に引っ越してから、それでも要所要所でのイベントごとには顔を出し、皆んなの表情を映し出してきた。

 

俺の写真の技術上手いだろ?

どうだこの写真、ばえるだろ?

 

そういうことが言いたいんじゃない。

 

ただ、ただ美しいものに直面したい。

その場をフィルムに写し撮りたい。

その一心だった。

 

ラジオの規模の割にあれこれしようとし苦闘するミッドアウトの2人の姿、ステージで躍動しはしゃぐおじさんの笑顔は美しい。嘘がないのだ。

 

大小さまざま、この世は嘘で成り立っている。

それは悪いことではない。生きるための術だからだ。

 

だからこそ、純粋なる嘘のない表情、それを切り取れる場面は楽しかった。

気がつけばカメラを構える自分の口角も上がっていることに気がつく。

 

結婚し、家庭を持った。だからといって今までの全て、あれこれを捨てるわけではない、諦めるわけではない。今回はどうしてもいけない。最後まで迷った。

 

だが必ずまたこのラジオの先にある2人の元で

俺はシャッターを切る。

 

その決意としていま、奥歯を噛み締めながら

何台も並べたスマホに向かってシャッターを切ったのだった。

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FMさつませんだいスタジオ

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ニシゾノティーダのBGM、ザナルカンドにてが流れる中、剛は少し焦っていた。

FMぷらぷらの数字が下がっているという先程のくすもとさんの言葉に動揺していたのだった。

わざわざそんなこと言うなよ、そうとすら考えていた。彼は褒められて伸びる子、いつも最高だと思って生きていたいのだ。

最高じゃなきゃイヤBOYとは対照的に、どんと構えている男がいる。対面に座る古垣団のティーダこと、マスチャーだ。彼はいつも最高な時ほど、最低の想定をしている、それは常日頃からのことで、だからこそ彼が古垣団のティーダと言われる所以なのだ。むしろマスチャーはくすもとさんが言う前から、ぷらぷらの数字も下がってるだろう、と考えながら喋っていた。ど深夜もど深夜だ、多少の下がりは想定内だ。くすもとさんが言わなければ自分が言っていたかもしれないとさえ思っている。

そんな彼なので、ニシゾノティーダのコーナーにおいても変わらず喋り続けた。ミッドアウトの幸運なところはパーソナリティが並びで2人いるところだろう。

これが、うたまんだと変わってくる。うたまんは並びで2人いる番組ではなく、わかまつごうが前に、そしてサポート役として楠元貴宏がいる、と言う構図だ。いい時はいいが、ごうりんが例えば崩れた時、立て直しはなかなか難しい。だがミッドアウトならばどうだ。ごうりんとマスチャー横並びに立っている。いま、ごうりんがくすもとさんの言葉に動揺しているが、マスチャーは平気な顔だ。むしろ絶好調と言っていい。そんな絶好調なマスチャーの喋りに引っ張られるように、もう一度ごうりんもしゃべりのリズムを整えていく。

ミッドアウトのパーソナリティが川内北中同級生の2人でよかった。2人は多く語らないが、(逆にめちゃくちゃ語ってるとも言える)2人の友情は、それだけで美しい。絆とも言うべき2人の呼吸は、ニシゾノティーダのコーナーのザナルカンドにて、に乗って、ゆっくりとしかし確実に前進していくのだった。

 

 

ZIKU

 

ホテルのベットに腰掛け、彼は上機嫌だった。

旅はいい。色んな人に会えること、色んな景色が見れること。コロナ禍となり、なかなか表立ってこう言う旅に行く!と言えないムードが続いたが、今はいける!そう確信した彼は関西経由で金沢へと旅をしている最中だ。

 

なかまたち、リスナーたちと顔を合わせ、酒を交わす。至福の時間だ。このために生きてると言ってもいい。

別れ際はいつも少し寂しいが、その寂しさがまた次に会うための原動力となってくれるのだろう。

 

ホテルの部屋に帰り、シャワーを浴びる。バスローブに身を包み、タオルで髪を拭き、テレビをつける。

ローカルの番組が放送されている。

ローカルのこういう番組を見るのは旅ならではだ。

天気予報の表示が鹿児島ではなく、金沢北陸のものとなっている、これも土地土地で違って面白い。

テレビを見ながら、彼はウトウト眠りにつく。

旅も折り返しを過ぎ、疲労も少し出てきたか。

はっと目を覚ますと時計を見ると時間は28時50分。

 

鹿児島ではこれまた仲間のごうくん、まさとくんが集ってラジオをやっているはずだ。

FMさつませんだいのスタジオから生放送。こう言う面白いアイデアを実現させてる姿を見るのは正直羨ましくも感じる。

 

FMぷらぷらのアプリを起動し、デフォルトのFMぎんがの放送局から、FMさつませんだいを選択し直し、放送を書き始める。

 

ちょうど、ZiKUさんが送ったコメントが

流れているところですね。

 

私が思わず声をかけると彼は一瞬えっ!と驚いてこちらを見上げ、しかしその後微笑みを浮かべ

もう一度スマホの方を見た。

 

自分が送ったコメントをこうやって聞くのはなかなか好きでね。ごうくんマサトくんは仲間だけどライバルでもあると思ってるから、負けたくないって気持ちもあるから気合入れてコメント5分送っちゃったwww

 

流れるコメントに彼は満足そうだった。

2020年5月ラジオ交流戦という形で始まった両者の交流は今も続き、お互いのリスナーがお互いのラジオを聞くようになるという良い循環を起こしている。それだけではない、同じようなことを同じ熱量でやっている仲間がいる、これだけ心強く、胸が熱くなることはない。ことあるごとに彼らが声をかけてくれることも嬉しかった。

 

 

だがここでアクシデントが発生。ZiKUさんのコメントの最中、酔っ払いである役所タケシくんのジングルが重なって流れ出してしまったのだった。

 

これ!放送事故っすね!

 

私は思わず声をかけた。

 

彼は一瞬、驚いた顔でこちらの顔を見て、キョロキョロし、しかしすぐに微笑みを浮かべてこう答えた

 

 

生放送のあるあるやねwww

 

 

 

 

FMさつませんだい トイレ

 

ずいぶん冷えてきたな。

 

ああ、流石に寒い。

 

事前収録のヘディング家族が流れている間

ごうりんとマスチャーは横並びでトイレで用を足していた。

 

もうすでに番組は三分のニが終わり残り1時間弱。

マスチャーが鹿児島空港に到着し10時間ほどか。

随分と濃い、濃密な時間であった。

まだ終わったわけではない、何か成し遂げたわけではない。

だが、2人は油断すると涙がこぼれそうだった。

涙がこぼれそうなのを堪える。2人は尻に力を込め、尿を増量させることで、涙を堪えた。

 

だが泣きそうになるのも無理もない話だ。

スタジオブースに揃って喋る生放送。

 

それは2人の夢だったからだ。

 

 

 

2016年6月 東京神奈川

 

ミッドナイトゲットアウト#10 の放送を終えたごうりんマスチャーは居酒屋にて打ち上げをしていた。2人の家から歩いて近づいて行き、お互いの家の真ん中くらいで会おうという番組初の大型企画だった。4時間ほど歩き、その様子をラジオ配信した。

アホな企画ができるのが楽しかった。お酒を飲みながら、どんどんアイデアが湧いてくる。

 

イベントやりたいね、お客さん集めて

 

リスナー感謝祭的な

 

ミッドアウト祭り

 

公開生放送なんてのも良さそう。

 

やばいなぁー公開生放送。10人くらいしか聞いてないのに。

 

2人くらいしか来ないかもだけど。

 

イベントスペース借りれたらやってみたいなー。

知り合いの飲み屋とか、ライブバーとか、弾き語りできるとこやってみるかなぁ。

 

そういうスペースみたいなのを借りてもいいね。

 

ステージがあって、みたいな。お笑いやってるみたいな小屋とかでも良さそう。

 

コントもやりたいね。

 

市営グランド思い出すなぁ。

 

お題出し合ってコントを2VS2でやったなぁ。

 

ツーオンツー

 

 

4時間の歩行、しかもその間ずっとラジオ放送

ビールが美味い。酔いも周る。

 

公開生放送とかイベントもいいけどさ

スタジオでラジオとかやってみたいよなぁ。

 

あーいいねぇ

 

深夜ラジオっぽい感じでさ、作家さんとかいて

ディレクターの人がいてさマイクに向かって。

 

手軽にスマホで出来るからこそなぁ

 

面白そうだよな。

それもなんか借りれるとこあるっぽい

 

今調べたら渋谷の方で貸しラジオブースみたいなのあるね、スタジオ1時間一万や。ディレクターとかエンジニアつけたらさらに一万。笑

 

やばいなー1時間二万かぁ。

なにより、僕知らない人がいたら喋りにくいからなぁ内弁慶だから

 

まぁ関係性ある人がいいよなぁ。仲間欲しいわぁ。

 

ARIGATO MUSIC東さんやってくれないかな。

 

やってもらおう

 

いやー夢は膨らむねぇ

 

やれると思うんだよなー

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2021年 FMさつませんだいスタジオ

 

ヘディング家族は大きな感動に包まれ、笑力のコーナー後半戦も大熱戦の中大きな盛り上がりを見せた。

 

番組はとうとうエンディングに差し掛かる。

 

2人はもう涙や鼻水でぐちゃぐちゃな顔となっていた。

 

楠元さんも同じだった。メガネは完全に曇り、鼻水や涎でぐちゃぐちゃ。

 

満身創痍とはこのことだろう、寝たいのか、休みたいのか、喋りたいのか、感謝を述べたいのか、感情が混ざりに混ざってカオスだった。

 

 

最後にみんなに歌を歌いたい。

いつも冗談っぽくネタっぽく歌うのだけど

今日は、今日はまっすぐ歌わせてください。

 

いつになく真剣な表情の2人。

演奏されたのは移動中イヤホンやステレオから流れてきた

リハーサルでも何度も繰り返したあの曲だった。

 

タイトルは

ミッドナイトゲットアウト

 

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ギターの弦というのは、だるんだるんに緩んでいると音が出ない。ブジッジにはめ込み、ペグに巻き付け、やがてネジをしめると弦は少しづつ少しづつピンと張っていく。初心者は弦が切れるんじゃないかと怯えるだろう。しかし、弦は切れることなく、少しづつ張り詰められていき、そして美しい音を奏でる。

人もそうなのかもそれない。だるんだるんに生きていくこともできる。それが心地よい時もある。だが、張り詰め張り詰め、切れてしまうかもしれないと怖いがそれでもまだ張り詰めていく。その時に鳴らされるメロディはそれはもう美しい。

 

今回の現地生放送は極限にハードスケジュールだった。色んなプレッシャーと疲労ダメージを受けながら、彼らは張り詰めていった。

 

だがそのピンと張られた緊張の糸からかき鳴らされるメロディは何よりも美しく我々の心を魅了する。

 

マスチャーがハーモニカに息吹を与える。

10個の穴から鳴らされる旋律はきく人々の胸を打つ。

 

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過ぎ去った日々は消えてしまったんだろうか?

もう心の中に、思い出の中にしか残っていない幻のようなものなのだろうか?

それとも、私たちのこの体を心を作る一部となったのだろうか。

 

過ぎ去った日々に意味を作るのは

 

 

 

エンディングテーマの

地平線はよくみるとまあるいカーブが流れる。

 

ボヤケルズの名曲だ。いつも番組のエンディングを彩る、噛み締めるような名曲だ。

 

 

残り時間が迫る。楠元が2人に合図で残りの分数を伝える。まだ続けたい気持ちもある、だが終わりは必ずくる。

 

お相手は、わかまつごうとニシゾノマサトでした。

また来週!

 

 

確かな手応えと、ずっしりとした疲労感。

3時間に及ぶ現地生放送がここに完結した。

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集ったのはごうりんマスチャーだけではない。

 

鶴丸予備校での漫画や足フットテストが

吹上浜キャンプ場でのヒーローショーごっこ

なおきの結婚式の二次会以降の盛り上がりが

第一回のミッドアウトの初々しさが

第10回歩いて会おうの打ち上げでのアイデア

4コマ漫画の仕事について2人で揉めたことが

過酷なヘディングのラリーが

楠元さんのラジオにかけてきた日々が

リスナーの情熱や愛情が

家族の愛と理解が

ここに集い、この場を作った。

 

ことみちゃんのアップルパイよろしく

沢山の縁や想いが幾重にも幾重にも交差して

大きな大きな丸を作る。

よーくみるとまあるいカーブ。大きな大きな

大団円だ。

 

 

 

過ぎ去った日々に意味を作るのは今だ。

 

また今日が過去になり、過ぎ去った日々となった時

またそれに意味をつけるのはこれからなんだろう。

 

 

ミッドナイトゲットアウト

 

 

真夜中に出ろ。

 

さあ、じきに夜が明けるよ。

 

 

日々に帰ろう。

またここに来よう。

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わかまつごう

 

ヤカンが鳴った。

彼は慌てて止めにいく。そして熱湯をポットへと流し込む。ミルク瓶を二つ洗い、煮沸した後、寝室に用意する。

あとはごめんお願いしていいけ。ことみちゃんに声をかける。

もちろんもちろん!パジャマのことみちゃんが歯磨きをしながら答える。

 

ありがとう、とお礼を言い、水の入ったコップを携え、彼はパソコンのある奥の部屋に引っ込む。

 

イヤホンは、ある、と。油断するとよくイヤホンを無くす。ちなみに靴下の片方もよく無くす。

 

ちょうどスマホに着信がある。

 

 

まさとんまさ

 

 

と表示されている。

 

 

 

ニシゾノマサト

 

夕食の食器を片付けてからPCを起動するのがルーティーンになってる。メールBOXに貯まった数十のコーナーメールを整理。「本当のメール」という言葉を使わなくなったのはいつからだろう?

 

どの場面を切り取ってもミッドアウトを始めた頃から進化してると感じる

 

パソコン調子はどうか?

パソコンが重くなるのはバックグラウンドでアップデートが行われているから。

事前に更新して、放送時間のアップデートを停止していればいい。

もう心配する必要はない。

 

自分達が楽しめればいいと始めたラジオ

結局のところ、自分達の楽しみは

ミッドアウターの楽しみとリンクしていることに気づいた

 

そう考えるとワクワクが止まらない

現ナマ終わり空港に向かう車内

もう暫くミッドアウトはいいなと笑いあった

でも、もうラジオがしたい

 

Skypeを起動

ごーりんへ通話開始

 

ミッドアウトが始まる

 

 

 

 

 

ミッドナイトゲットアウトスマッシュ各地生放送

 

 

オープン時間の音楽が流れる。

この音楽が流れている間に、少しづつ少しづつ人が集まり始める。

ほんとうに少しづつ、皆マイペースに集う。

 

それでいい。

 

それが俺たちらしい。

 

皆が集うこの場所の名前を

ミッドナイトゲットアウトスマッシュと言う

 

 

じゃあそろそろ行きますか。

 

 

あのー、さ

 

 

 

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