2021.3.2 スマッシュ#57 ごうりん父になる

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今週もミッドアウトスマッシュを聞いていただき

ありがとうございます。

 

人生ラジオ。

2人の幼馴染と、周りを取り囲むフレンズ

そしてリスナーの成長物語。

 

その感動の節目、ごうりん第一子誕生記念回。

まだ聞いてないあなたは

たくさんの湯とタオルを持って聞いてみてください。

ミッドアウトスマッシュ#57 - ミッドナイトゲットアウトスマッシュ公式 (@midnightgetout) - TwitCasting

 

三月二日、ねこのてのあることみちゃん宅で

のんびりと起きたごうりんとことみちゃん。

前日はラジオうたまんがあり川内から夜帰宅

個展の疲れもありまだ体も頭の中も重い。

ことみちゃんが10分おきにお腹が痛い、と言い出す。

妊娠38週と4日。予定日は3月12日なのでまだ少し早いが

 

これが、もしや。いよいよか?

 

大きなお腹をさすり、まだ余裕のありそうなことみちゃんと

助産師のカワバタさんに電話を入れる。

 

ちょうど昼から検診が入っていた。

車に乗り込み、まだ余裕の様子の2人は

他愛もない話をしながら助産院へと高速で向かった。

この日のうちに起こることをまだ2人も

神奈川のマスチャーも知らない。

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1999年川内の鶴丸予備校の自習室

中学生達が受験勉強に精を出す中

15歳のごうりんとマスチャーもそこにいた。

なにやら熱心に鉛筆を走らせている

勉強に熱が入っているな、と覗き込むと

彼らは漫画を描いていた。コレコレという

カードゲーム漫画だ。

 

2人は一個の漫画を回し描きし、互いが描いたコマを

面白いねいいね、と褒め称えている。

それを他の生徒達も読んで面白いねと称える。

 

塾が終われば同級生タカリンの家に赴き(ここが溜まり場だった)、ここでも漫画作成、ラジオごっこRPGツクールパワプロサクセスモード、ヘディング家族、ジャマー、阿弥陀神、鉄拳タッグトーナメントなどに熱心になっている。

ここに集まっていたモイなおき、気軽に古楽器、たかりん、ごうりん、ますちゃーこの五人古垣団と呼ぶ。いつから呼び出したかは覚えていない。いつのまにかよくこの五人で集まっていた。

 

その遊びの中のひとつラジオごっこ

現在のミッドナイトゲットアウトスマッシュの

原型となっているのはミッドアウターの間ではあまりに有名な話だろう。

 

クローズドの空間で放たれる言葉の応酬。

この頃から2人のラジオトークセンスはずば抜けていた。他の三人は2人の話を笑いを堪えながら聴く。笑ったら行けない空気、ガキ使の笑っては行けないなどまだこの頃は放送されていない。それを素でやっていたのだ。

 

しかし、この時代、名もなき中学生がそのラジオを

配信するツールなどはまだない。

彼らは早すぎた。機はまだ熟さない。

閉じられた部屋のクリエイティブはただ静かに

その場限りで消費されていく。

 

 

時がたった。

 

 

ごうりんは音楽をはじめ、ボヤケルズというバンドでデビューと共に上京。ライブと飲みとバイトの日々。

マスチャーは神奈川でサラリーマンをして結婚、第一子にも恵まれ順風満帆な暮らし。

共に31歳。

 

20代の頃は2人の価値観は合わなかった。

もともと笑いのツボは似ているが、性格の真逆とも言える2人だ。この頃はお互いの生き方を受け入れる余裕もなかった。

しかし仲は悪くなかったように思う。20代の時も年に何度か遊んだりしていた。マスチャーが結婚する際ごうりんが見届け人にサインするなど交流は途絶えてはいなかった。

 

そこからまた2人が急接近したエピソードは

ファンの間ではあまりにも有名だ。

モイなおき結婚式での"伝説の10分"と呼ばれる一本の漫才。

そして夜を徹して行われたお題をもらって行われた即興コント(後にそれはエチュンドと呼ばれるようになる)

 

その結婚式での出来事を経て、ごうりんがマスチャーを誘う形でツイキャスラジオ放送が始まった。

2016年4月7日、ミッドナイトゲットアウトだ。

 

なぜマスチャーだったのだろう?

ごうりんの周りの音楽仲間には面白い人や変わった人材はたくさんいた。

生き方や育った環境の面白い者、人気のある者

ステージに立つ人間達に面白い人は多い。

その中からなぜイチ、サラリーマンであるマスチャーを誘ったのだろう

 

結婚式でのあの即興での漫才に

大きな広がりを見たからなのではないか。

以下はミッドアウトのインタビューでのごうりんの言葉だ

 

「面白い人は星の数ほどいる。だけど、まさとはまさとしかいない」

 

かくして、始まったミッドナイトゲットアウト。

始まった当初はごうりんは東京豪徳寺住まい。ツアーで各地を転々とする日々

マスチャーのもとにはまだ子どもは1人だった。

ラジオが始まり五年ほどが経つ。

 

31歳の男達が36歳になりもうすぐ37歳もみえてきた。

まだ20代の若さを引きずった当初とは変わり

随分考え方や環境も変わった。

ごうりんが東京の彼女にフラれ大きなショックを受けたが

後に2人はそれをラジオの名企画「フラレストラックアウト」として昇華させたことはあまりに有名だ。

思えばこの頃から人生ラジオは始まっている。

 

2020年、ごうりんは結婚をし、妊娠発覚。

コロナ禍でのライブ活動もまともに行えない今

ごうりんがよく口にするのは

「正直にいたい」ということだ。

 

お笑いのラジオが好きな青年だった。

東京のラジオ局から放たれるお笑い芸人達の面白い目線のトーク

職人達がつむぐ、度肝抜くようなネタメール。

 

自分たちがそれに少しでも近づきたい気持ちもあった。理想と現実のギャップに悩むこともある。

生活がある。

生活があり、ラジオがあるのだ。

2人は今の生活を投げ出し

なりふり構わず、お笑い芸人を目指し

そこから大人気ラジオへの道を模索するのか?

 

いや、しない。

そのことで捨てなくては行けないものがあまりに多いことは

2人も知っている。それは2人のやりたいことではない。

 

ラジオ大好き青年になるもっと前。

タカリンの家で行われていたラジオごっこ

あれでいいんだ。

大人になり、いろんなことに慣れていく。

大概のことは予想がつき、感動は薄れる。

だが、木曜日23時からの90分

この時間よりも笑う時間はないと語るのはごうりんだ。

最初はごうりんに乗っかる形で始まったマスチャーだが

最近はどんどん率先してアイデアや業務をこなす。

 

正直でいたい。

清々しくありたい。

 

東京での生活、ごうりんは事務所の人たちに囲まれ

タクシーで移動したり、西麻布で高そうな肉や酒を食べたり、どこの人かわからない業界の人に挨拶をしたりしていた。傍目にみたら、すごく贅沢なことだろう。だが、実体や本音を感じられないその場所は、なにか居心地が悪かった。こう喋らなきゃ行けない、こう振る舞わなきゃ行けない。売れる、という頂を目指し、みんなが必死で登っていく。山は一つじゃないはずなのに、なにか違和感があった。

 

生活に根ざしたトークは地味だったが

そこに嘘はない。

いや茶番などは多いのだがそこに

作り笑いや嘘はなかった。

神奈川と鹿児島の遠距離で2人はお互いの生活を中心に据えながら

その中でやれる"ラジオごっこの続き"を大切にした。

 

 

変化が起きたのは2019年。第3回の公開生放送で

FMさつま川内での放送がスタートすると発表された。

 

ツイキャスで、しかも何者でもない2人が話してるトーク

なんと地元とはいえFM局が買い取り流すというのだ。

今聞いても訳の分からない話だ。

楠元さんという理解者との出会いだ。

見てる人は見てる。

 

 

そこから、ラジオで放送されるから、という意味で

番組は少しだけ洗練されていく。

ゲストを呼び、横の繋がりが出来、そこからリスナーも広がり

自作のメールばかり並んでいたネタメールコーナーに

"ほんとうのメール"ばかりになった。

ごうりんは結婚、そして妻のことみちゃんの妊娠も発表。コロナでの現状。

人生ラジオは健在だ。

そしてまた、人生の節目が訪れようとしている。

 

 

話は3月2日のお昼に戻る。

助産院に着いたごうりんとことみちゃん

大きいお腹に、ここで産まれるんだよ、と話しかける。

だんだんと強くなる痛み。

カワバタさんも、一旦帰ってもらって様子を見るか

このままここで様子を見るか決めあぐねている。

陣痛がここまで来たが落ち着き、そこから何日かあく、なんてケースもあるらしい。

 

だがどんどん痛みは強くなり、出産をするための

薄暗い四畳程の部屋に横になることみちゃん。

ごうりんはビデオで撮影したり、ギターでも弾く?と呑気だ。

まだそれだけ、部屋の空気は軽かった。

 

しかしこれは来るな。今日産まれるな。

強くなる痛み、余裕のなくなる表情のことみちゃん。

 

ごうりんが四つん這い(虎の構え)になり、ことみちゃんがその背中に腕を置く、虎の構えの中でも奥義とされる双虎の構えを取り、いきむことみちゃん。

 

聞いたことのないような声が漏れる。痛みはどんどん強くなり、そしておさまってはまたさらに強くなる。男はただ、虎の構えで「いい塩梅!」と言うしか出来ない、無力だ。

 

カワバタさんは何かをするわけではない、声をかけ、背中をさすり

自然に人間が持つその力をただひきだすサポートをするだけだ。

 

まだまだかかりますか?

ことみちゃんは相当消耗しているのがわかる。

目も力がない。ただ一定間隔で襲いくる痛みに

なんとか耐えている状態だ。

「おはなちゃん(お腹の中ネームでそう呼んでいた)も頑張ってるよ」ごうりんが声をかける

ことみちゃんがしずかにうなずく。

 

やがて、本当にいよいよなのだ!と部屋の中が緊迫しだす、色々な器具がようやく運び込まれ

ヘルプの助産師さんがもう1人来てくれた。

4人、いや5人だけの部屋でことみちゃんはただ痛みに耐え

おはなちゃんは体をくねらせ少しづつ出てこようとする。

 

ごうりんは虎の構えをやめない。

虎の構えをとりながら、ことみちゃんの手を握る。

 

頭が出てきたと同時に体ごとスポン、とおはなちゃんは出てきた。

大きな大きな産声をあげた。

そのまま母の体に密着させると泣き止むおはなちゃん。

部屋の空気が安堵に包まれる

 

3月2日夜の22時09分、3100g。

13時から9時間なのでかなり早い出産だが

ものすごく濃い、激しい9時間だった。

 

人の子を抱っこなどしたがらない

人ならざる者、ごうりんがおはなちゃんを抱っこする。

すでに毛がふさふさでごうりんそっくりだ。

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母はすごい。

ことみちゃんはすごく頑張った。

一生褒めないといけない。

ごうりんは言う。

 

おはなちゃんと呼ばれていた女の子は

"ことはちゃん"と名付けられる予定だ。

※字は迷い中

 

 

私たちは忘れてしまう。

こんなすごいことをして生まれてきた自分のこと

お腹を痛めた母のこと

それぞれにいろんな事情がある。いまの現状がある。

だけどこの瞬間が自分にもあったのだ

思い出さなきゃいけないと思った。

 

 

かくして、このトークもミッドアウトスマッシュで

もちろん披露された。

すでに2人の娘の父親であるマスチャーも感慨深げだ。

ごうりんはパパとしての生活が始まる。

マスチャーの第一子はこの4月で小学生だ。

生活は続く。そして変わっていく。

当たり前のように。

 

 

正直にいたい。

カッコ悪くてもそれを受け止めて

前に進みたい。

 

 

ミッドナイトゲットアウトのツイキャス

リスナーはほぼ横ばいだ。うっすら減ったりもする。

たまに人気ゲストが来るとドンと増えるが

また20弱くらいにしっかりと落ち着く。

そりゃあ500とかになったら爽快だろう。

 

まあでもこの20弱の濃い仲間達と

地味で静かな成長を共にするのも悪くないと

私は思うのである。

 

 

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ミッドナイトゲットアウトスマッシュ#57

ディレクターズカット版

FMさつませんだい 3月6日(土)27時から放送。

FMぷらぷらと言うアプリで全国どこでも聴けます。

 

#ミッドアウトスマッシュ

 

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